ep.2 駆け引き

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「恋なんてさ、遊んでなんぼじゃん。 あんな抱き方するんだから、きっと俺と同類かと思ってた。」 「どういうことですか、それ。」 あんな抱き方っていつの話だよ。心当たりありまくりで逆に頭パンクするわ。 「本気になったことなんてないんだろな、お前。」 そう言って指を全て絡めてからこう囁いた。 「本気になりたいんだったら、俺と付き合えよ。 あんたの全部、飲んでやるからさ。」 まず、確認したい。 俺は、同性愛で、ゲイで、ホモで、 もっと言うと、苛めて焦らして攻めたい主義である。 飲む?何を飲むんだよ、みたいなそんなうぶな返しはしないけど、 それより何より、いろいろ事件発生しすぎてわけがわからなくなってきた。 もしかしてこいつ、隆と兄弟なのか。 あんまり似てないんだけど、というか全然似てないぞ。 俺なんかやらかしたんだろうか。 連れも一緒していい?と後輩に紹介された時に何かしたかな。 いやいや、恋人の名字と同じってだけで、ビクッと反応するようなヘマはしない。 こいつ、いったい何者なんだよ。 「隆君とは、御親戚ですか?」 隆君だってさ、なんか照れるな。 「ふーん。えっとね。隆君とは、双子なの。二卵性ってやつだわ。」 そういうことか。いや、納得するのも早すぎるんだけど、 とりあえず今は納得した体で考えるけども、 双子って、恋愛の趣向も似るものなのか。 「見てたんですか?」 おそるおそる聞いた俺の焦りを余所に、彼は淡々と話を続けた。 「隆が好きな人が出来たっていうからさ、 紹介しろよって言ったんだよ。 そしたら紹介したくないって言うんだよ。」 そんな話何も聞いてない。 しかも紹介したくないってなんなんだよ。 隆のやつ、帰ったらしつこく焦らしてやる。 「なんで紹介したくないって言ったかわかる?」 「俺のことそんなに好きじゃないんじゃないんですか。」 心にもないことを言うと、人はここまで顔の筋肉がこわばるものなのか。 隆がどんだけ俺のが好きなのか、俺が一番知ってるんだよ。 全部わかるんだよ、手に取るように。 なのになんで、なんでだよ。 なんで俺のこと、紹介したくないんだよ。 ねえ、隆、教えてくれよ。
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