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俺の表情を確認する仕草をしつつ、少し早口に彼は言った。
「逆だよ。お前のこと大好きなんだって。」
「え。」
ごめんなさい、隆君。俺が悪かった。
今夜はいろんな意味でお前を寝かさないからな。
その言葉を直接俺に言ってくれ。こんなやつから聞きたくなかった台詞だわ。
「いつもさ、隆の彼氏は俺が奪っちゃうっていうのが恒例なのね。
これ必須条件ね。だって、隆だけが幸せとか不平等じゃん。
ちょっと可愛い顔してるからって、親の愛情全部あいつのもんだもん。」
あなたも十分綺麗な顔してますが、何言ってるんだよ。
「とりあえず、今日のことは隆には話しません。
今日も普通の飲み会だって言ってるし。俺は、確かにゲイですが、
あいつらに言うことも言いたいって思ったこともないし、
これからもそのつもりはありません。
それから、お兄さんに会ったことも言いません。
何かのきっかけで紹介させたとしても、初対面対応でお願いします。」
息継ぎなんて忘れるくらい捲し立ててやったぜ、ざまあみろ。
なんて、思いながら絡まった手を急いで突き放した。
「あいつに本気なの?」
少しだけ弱く聞こえた彼のその声を押しつぶすように、素早く俺の声を重ねた。
「はい。もちろん。」
そう言って、お開きムードの席に足早に向かった。
この恋を大切にしないとと、秘かな決意と共に、
今日どんな風に隆を抱こうかそれだけを考えていた。
「その本気、少しだけ舐めさせてよ。」
遠くに聞こえたその声が、彼の声だと思ったのはきっと無意識で、
意識には刻まないように前を向いた。
to be continued...
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