忍ぶれど

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  頃合いを見て、志緒を連れ ゲーセンの裏口から戻ると、 顔見知りの店員が 気付いてくれて、 奥の部屋に行くことができた。 そこには思った通り、 きちんと章子を もてなしてくれている 花琳(ファリン)姐さんがいた。 花琳姐さんの父親が 俺のファンで、 よくジャズバーに 歌を聴きに通ってくれる。 花琳姐さんはそんなふうに 知り合ったうちの一人だ。 まだ25歳だが この街に精通している花琳姐さんが 近くのヤクザの幹部の 公然の愛人というのは、 ここらでは当たり前の話だった。 「おかえり、色男」 日本で生まれ育った 花琳姐さんは 未だにカタコトの父親とは違い 流暢な日本語を話すものだから、 本名を聞かなければ 華人だとは判らない。 .
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