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翌日。
天気予報が外れた、予想以上に速いスピードで通過して行った。
いつも通りに店を開けると、賢一と聖美がやって来た。
天気の回復とは反比例で、店には二人しか。
賢一が三杯目のお酒を頼んだ時に、マスターが声を掛けた。
お酒を賢一の前に置きながら、
「昨日、吹雪の中。涼子ちゃんが来たんだよ」
賢一が手に取ったグラスを落とした。
ガッシャーン
「大丈夫、怪我はないかい」
気遣うマスター、
「すいません。グラス割ってしまって。大切な用事、思い出したので帰ります」
そう言って、聖美と店を出て行った。
マスターは、掃除をしながら変な違和感を感じていた。
掃除が終わったが、店にはお客が来ない。
天気が良すぎて、夜に気温が下がり寒すぎて出歩かないのかなと、マスターは思っていた。
人が来ないのでマスターは、22時に店を閉めようとした。
閉店の準備をしていると、二人組の男が入って来た。
マスターの目の前に来て、
「警察です。確認したい事がありまして」
身に覚えの無いマスターは、何だろうと考えていたが、
「実は、この方をご存知かと思いまして」
出された写真は、涼子であった。
雪に埋もれていたんだろう、顔には雪が付いて髪は雪だらけであったが、表情はまるで寝ているかのように、穏やかな表情をしていた。
「涼子ちゃんです。いつ亡くなったんですか?」
「三日前の夜かと」
「・・・・・・」
今日も雪が舞っている北国の街。
マスターは今日も一杯、涼子におごっていた。
(了)
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