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昨日の成人の飲み会で帰りが遅く、夕方まで寝ていた時生(ときお)。
今日は、家で成人のお祝いを家族でする。
父は時鐘(ときかね)と言い、『時』という漢字が名前についている家系である。
名前について時生は、先代からの受け継いだ伝統?しきたり?そんな風に受け止めていた。
母親の声が、
「時生!、始めるわよ。早くおいで」
今日は二十歳の祝いという事で、ビールで乾杯。一人っ子の時生が二十歳になったのが両親とも嬉しかった。
父親は特に、息子と酒を飲めるのが嬉しい。
機嫌の良い父の時鐘が、プレゼントを持ってきた。
「時生、二十歳のプレゼントだ」
3センチ、20センチ位の木の箱を渡された。
蓋を開けると、時計が入っていた。
文字盤は数字で、曜日と日にちがあるシンプルな腕時計であった。
「時計? どこのブランド?」
学生の時生はブランドにしか興味が無かったので、地味な時計はチョット期待外れだった。
「これは、ひいおじいちゃんが作った物だぞ」
「手作り? へー」
良く見ると、シンプルだが身に付けていても、変な感じはしない。
ひいおじいちゃんは、有名な物理学者であったがノーベル賞はアインシュタインに、やられたという言い伝えがある。
そんな時計があるなんて、時生は知らなかった。
「時生、注意がある。ぜんまい式の時計だから、巻き過ぎない様にしないと壊れてしまうからな」
「そうなんだ」
「後は、時間を正確に合わせる事。一度時間を合わせたら絶対に狂わないから」
「凄いね、正確なんだ」
そんな話しを聞いて、時生は時計を少し気に入った。
二十歳のお祝いが終わり、自分の部屋で時計を眺めていた。
眺めていると、何か愛着が湧いてきた時生は、ぜんまいを少し巻き、曜日と日付を合わし、時間も正確に合わせてみた。
「明日、時間を確認しよう」
正確とはいえ何秒かは、ずれると思っていた。
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