第1章

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───2年後 「ほら!頑張りなさい!貴女が頑張らなきゃ、赤ちゃんが苦しいのよ!」 「んっ!……あぁ!!」  壮絶な声が分娩室から聞こえてくる。  私と旦那は廊下で落ち着きなくウロウロしていた。  結婚してからなかなか子宝に恵まれず、不妊治療を頑張る娘の姿をずっと見守り励ましてきた。 「さぁ!頭が出てきたわよ!もう少し!もうひと踏ん張りよ!」  祈る様に両手を組み、ギュッと瞼を閉じる。 「……なぁ」  何かを思い出したのか穏やかな声で話し掛ける旦那を見ると、口元を緩ませ嬉しそうに言った。 「デジャブかな?……お前が双子を出産する時、やっぱ同じ言葉を壁越しに聞いたんだよ」 ──大丈夫だよ。母さん。 「アイツらが産まれた時に建てた家も、もうガタがきているなぁ……」 ───僕等は、こんなに愛されていた。 「アイツら……、向こうで幸せだろうか」 ───僕と、俺からの恩返し。  見えない空を見るように、上を仰ぎ見る姿が息子の癖と重なり頬が緩む。 「あの子達は、……私達に沢山の贈り物をくれたわ。  今回の赤ちゃんだって……」 「ふ、……んぎゃ!…んぎゃ」 「産まれた!!」  旦那と顔を合わせ喜び、上を仰ぎ見て瞼を閉じ、静かに心で話し掛けた。 ───素敵なギフトを、ありがとう。  貴方達はいつまでも代わらず私の愛しい息子よ。  また、お盆に『ただいま』と揃って帰って来て…… END
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