第1章

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 いつものように二人でぼんやりと過ごせば、公園がオレンジ色に染まり元気に遊んでいた子供達がお母さんやお父さんと手を繋ぎ敷地から出ていく時間はあっという間。  僕もそろそろ帰らないとクラスメートが通ってサボってるのがバレてしまう。 「……行ってい?」 ベンチから腰を上げた瞬間問われた言葉に「お好きにどーぞ」と口にしながらも(いつも来るんだから今更過ぎるだろ)と苦笑い。 帰路を歩いといると野球少年達が、泥の模様をつくったユニフォームをまるでそれが勲章のような清々しい表情ですれ違う。  チラリと振り向きその後ろ姿を見て、不意に幼い記憶が頭を過ぎった。 小学生の頃は僕も野球に夢中で、毎日泥や砂にまみれながら汗を流したものだ。  休日には父親とさっきの公園でキャッチボールをしたり、ランニングしたりしていたっけ……。  父親が野球が好きだった。  僕が頑張れば、父親は目尻を下げ目一杯嬉しそうに褒めてくれる。  だから僕は野球を頑張ったんだ。  もっと褒められたくて……  もっと僕を認めて貰いたくて……  もっと僕を見て貰いたくて…… ───だけど  二年くらい前からだったか……  仕事を理由に、キャッチボールをしなくなった。  ランニングもなくなって……  野球の話さえしなくなって……  終いには、顔を合わせる事さえもなくなっていった。
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