第1章

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──3年後 「まぁ!ウェディングドレスって幾つになっても着たいわよねぇ」 「ハハ。お前は娘の結婚式で羨ましがって、どうするんだ」 「あら。だから特別に感じるもんじゃないのよ、貴男ったら!」 「止めてよぉ~。少しはお涙的な展開になんないのかなぁ?ムードもヘッタクレもないわよぉ…」  大きな十字架の飾られた教会の控え室。  あれから母さんの言ってた彼氏との付き合いが続いた姉貴は、今日ここで結婚する。  今日の為に伸ばしたのか綺麗なロングの髪は結われベールに包まれていた。  ホテルのチャペルとかの方が宿泊も出来るし、料理だって豪華だからいい筈なのに、なんでか街の教会での結婚式。  壁に寄り掛かり幸せそうな姉貴の周りを囲む母さんや父さんの会話を聞きながら(なんでホテルじゃなくて此処なんだ……)と独り考えていた。 「姉さん、綺麗だな」  勿論、コイツも一緒なわけで。 「馬子にも衣装ってやつかなぁ?」 「こんな日くらい、素直になれって」  横並びに壁に寄り掛かってそう言った奴と視線が合い、どちらからともなく笑顔になった。 「幸せだな」と言いうと「あぁ」と応える。また視線を笑い声が響く先へ戻すと、ポツリ横でおちた言葉が耳に届いた。 「俺も幸せだ」 「なんでお前が幸せなんだよ」 「なんでって……家族だろ?」
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