白の章 Ⅰ

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「おおー、大したもんだ」 頭上からの拍手が響く。 「なんだお前」 見上げると、樹の上に亜人種が尻尾を巻きつけてぶら下がっている。 妖精猫(ケット・シー)。 「いやあ、こんな山奥に人が入ってくるなんて珍しいと思ってね。観察させて貰っていたのだけど、まさかヌシを釣り上げるとは」 「ヌシ?」 「そいつだよ、君が今釣り上げたパーチ。いやー、私もずっと狙っていたんだけどねえ。先を越されちゃったなあ」 ははーん。 こいつの狙いは、この魚か。 妖精猫は悪知恵が働くらしいからな。どうにかして、俺から魚を奪おうって算段だろう。 が、悪いがこっちも生活が掛かってる。やすやすとくれてやる訳にはいかないな。 「ねえ君」 そらきた。さて、どんな搦手で来るか。 「その魚、私と半分こしよう」 「 」 うーむ、ストレートすぎて言葉が出てこなかった。
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