白の章 Ⅱ

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「わかった」 「うにゃ?」 喧騒に満ちた酒場で、口一杯に飯を詰め込みながらカイトが振り向く。 「行くよ、聖域に」 「ふぉんとうかい!?」 「ああ」 一年だ。 あれから一年間、本当にずっと付いて来やがった。 獣の谷、妖樹の森、果てはヴィクトリア大瀑布。 最初の内はどうにか撒いてやろうとしただけだったのが、気付けば国の端から端までの長旅だ。姿を消す事も多々あったが、暫くすると何処からか現れやがる。 今思えば俺も馬鹿だった。まさかこんなにしつこい奴だったとは。分かっていればあの時斬り殺していたものを。 「怖っ。そんな事ばかり言っているから友人も出来ないんだよ」 こらこら、人の回想に勝手に絡むな。 「しかし、ヒジリからそんな言葉を聞けるとは。お父さん感激だよ」 「いつから俺はお前の息子になったんだ」 ふむ、それで思い出した。 「そういえば、あんたの息子…俺じゃねえよ馬鹿か。大丈夫なのか?放っといて」 「大丈夫でしょ。ガキじゃあるまいし」 「そのガキ共はどうなんだ。一度くらい帰ってやった方が良いんじゃないのか?聖域に行こうってんだ、生きて帰れるかどうか分かんねえぞ」
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