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「わかった」
「うにゃ?」
喧騒に満ちた酒場で、口一杯に飯を詰め込みながらカイトが振り向く。
「行くよ、聖域に」
「ふぉんとうかい!?」
「ああ」
一年だ。
あれから一年間、本当にずっと付いて来やがった。
獣の谷、妖樹の森、果てはヴィクトリア大瀑布。
最初の内はどうにか撒いてやろうとしただけだったのが、気付けば国の端から端までの長旅だ。姿を消す事も多々あったが、暫くすると何処からか現れやがる。
今思えば俺も馬鹿だった。まさかこんなにしつこい奴だったとは。分かっていればあの時斬り殺していたものを。
「怖っ。そんな事ばかり言っているから友人も出来ないんだよ」
こらこら、人の回想に勝手に絡むな。
「しかし、ヒジリからそんな言葉を聞けるとは。お父さん感激だよ」
「いつから俺はお前の息子になったんだ」
ふむ、それで思い出した。
「そういえば、あんたの息子…俺じゃねえよ馬鹿か。大丈夫なのか?放っといて」
「大丈夫でしょ。ガキじゃあるまいし」
「そのガキ共はどうなんだ。一度くらい帰ってやった方が良いんじゃないのか?聖域に行こうってんだ、生きて帰れるかどうか分かんねえぞ」
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