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「心配はしていないさ、仔細友人に任せてある。それに、元々私はずっと旅をしているからね。懐かないんだ、子供達が」
「うはは、そりゃそんな胡散臭いツラじゃ懐かれねえわ」
「支払い割り勘ね」
一人で好き放題食ってそれ言うか。
___
「たたたた、大変だ!」
日も沈み、騒がしかった酒場も落ち着きを見せた頃。この近辺では珍しい客が慌ただしく駆け込んできた。
「おやまあ、人間族だ。どうしたんだい、こんな所に」
犬頭の店主が尋ねる。
店主が言う通り、ここに人間が顔を出す事は稀だ。ヴィクトリア王国の南端、獣人ギルドが集まる外れの街。人の住む地域からはほど遠い。
「あんたも呪われた口かい?まあ人間なんて薄情なもんさね、一杯やりなよ!」
「そーだそーだ、大体人間族って奴ぁ俺は嫌いなんだ、調子に乗りやがって」
この街の奴等は比較的、呪い人に寛容だ。はぐれ者どうしの共感か、憐れみか。どうにせよ、俺の様な呪い人にはありがたい。
「お、俺は呪い人なんかじゃない!ああ、そんな場合じゃないんだ!竜が出たんだよ、竜が!」
「ぷっ」
「あははは!おい、誰だこの人間に幻覚見せたの!」
「にいちゃん酔い過ぎだー。少し頭冷やしてきなよ」
「駄目ら!もっと飲むのら!」
「おめえに言ってねえよ!ははは!」
爆笑の渦が巻き起こる。
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