白の章 Ⅱ

4/21

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
「竜だってよカイト。傑作だな」 思わず笑みが零れる。 竜。聖域の守護者にして、生物の頂点に立つもの。 彼等は世界が滅ぶまでそこに居て、伝説にある神々の財宝を守っているのだと聞く。 もちろん、確かめた者などいるはずもないが。 「あいつ、傭兵っぽい身なりだが、空想の中で大冒険でもしてきたつもりかねえ」 「ふむ、確かに面白いね」 「だろ?大体竜がこんな所に出てみろ、今頃街中大騒ぎだぜ…って、おい」 俺の言葉を無視して、カイトはその傭兵風の男に近づく。 「こんばんは。竜が出たってのは本当かい?」 「ああ…ああ!確かに見た、見たんだ!ここから東の丘で、ええと、なんだっけ、違う、嘘じゃない!」 「まあ、まあ、落ち着いて」 「す…済まない。兎に角大変なんだ、仲間もバラバラに逃げちまって…」 「君はどうしてこの街に?」 「た、たまたまさ。南へ大瀑布を観に行く途中だったんだ。それで、そう、赤草ヶ丘の山小屋で休んでたんだが…」 「竜が現れたと」 「近付いた訳じゃない。けどあれは確かに竜だ。これでも兵士をやってるが、あんな魔物は見たことがない。黒い鱗にびっしり覆われてて、大きな翼で、ものすごい咆哮を上げて丘の上に陣取りやがった。俺はなんとか気付かれないようにここまで逃げてきたんだ」 「ふむ」
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加