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「竜だってよカイト。傑作だな」
思わず笑みが零れる。
竜。聖域の守護者にして、生物の頂点に立つもの。
彼等は世界が滅ぶまでそこに居て、伝説にある神々の財宝を守っているのだと聞く。
もちろん、確かめた者などいるはずもないが。
「あいつ、傭兵っぽい身なりだが、空想の中で大冒険でもしてきたつもりかねえ」
「ふむ、確かに面白いね」
「だろ?大体竜がこんな所に出てみろ、今頃街中大騒ぎだぜ…って、おい」
俺の言葉を無視して、カイトはその傭兵風の男に近づく。
「こんばんは。竜が出たってのは本当かい?」
「ああ…ああ!確かに見た、見たんだ!ここから東の丘で、ええと、なんだっけ、違う、嘘じゃない!」
「まあ、まあ、落ち着いて」
「す…済まない。兎に角大変なんだ、仲間もバラバラに逃げちまって…」
「君はどうしてこの街に?」
「た、たまたまさ。南へ大瀑布を観に行く途中だったんだ。それで、そう、赤草ヶ丘の山小屋で休んでたんだが…」
「竜が現れたと」
「近付いた訳じゃない。けどあれは確かに竜だ。これでも兵士をやってるが、あんな魔物は見たことがない。黒い鱗にびっしり覆われてて、大きな翼で、ものすごい咆哮を上げて丘の上に陣取りやがった。俺はなんとか気付かれないようにここまで逃げてきたんだ」
「ふむ」
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