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そこまで聞いて、カイトは彼の言葉を遮る。
「分かった、ありがとう。東の赤草ヶ丘だね」
「っておい!あんた行く気か!?死ぬぞ!」
「少し様子を見に行くだけさ。折角逃げて来たんだ、君はゆっくり酒でも飲んで行くといいよ。それと」
「嘘を付くなら上手に付いた方がいい。何をしていたかは聞かないけれど、この時期のあそこは、盗賊団がよく使う根城だ」
「…っ」
___
カイトが街を出て数分後。
「あれ、ヒジリ。君も竜に興味があるのかい?」
慌てて追いかけた俺の顔を見て、奴はすっとぼけた表情でそう言った。
「金払え」
「ち、ばれたか」
「ハナっからそれが目的かてめえ」
腰に差した刀に手を掛ける。
「わ、ちょっと待って。竜が居るのは本当だよ、多分」
「ああ?あんな男の話を間に受けてんのかよ。お笑いだな」
「それがそうとも言えない。ヒジリ、竜と出会った事は?」
「あるわけねえだろ。あいつらは聖域にしか生息してねえはずだ。こっちに出てくるなんて事は」
「まず無いね。彼等の行動範囲は極々狭い。まるで本当に財宝を守っているように。ただ、こちらから引っ張り出すなら話は別だ」
「引っ張り出す?それこそお笑いだ。どこの世界に竜を犬みてえに扱える奴が」
いや、待てよ。
「まさかとは思うが」
「そう、月姫様だよ。彼女の持つ飛空挺なら聖域の間近まで行けるからね。大方、はぐれた奴を捕まえでもしたんだろう」
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