白の章 Ⅱ

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月姫。現国王である太陽王デュランの実子にして、稀代の大魔術師。 彼女、それと彼女の住む浮遊大陸について詳しい事は知らない。ただ噂によれば、月姫はその膨大な魔力を以って大陸の一部を空に浮かべ、自分だけの国を築き上げて好き勝手に暮らしているのだとか。 浮遊大陸はここからでも眺める事が出来る。あれだけの力があるなら、確かに竜でも手懐けられるかもしれない。 「そりゃ、あの姫さんなら可能かも知れねえが…現実味が無さ過ぎる。全部憶測だろ」 「普通なら私もそんな考えには至らないのだけど、あの男が言ってた竜の姿が本当なら、彼女以外にありえないんだよねえ」 「なんか言ってたか、あいつ」 「黒い鱗でびっしり覆われ、だよ。この種の竜は邪竜と呼ばれる。竜族の中でも下の下、その醜悪さから竜もどきとかコウモリ竜とか言われる、その辺の類だね」 「随分詳しいじゃねえか。無駄に知識だけはあるよなお前って」 「これでも求道者の端くれなので」 なんか誇らしそうだ。腹立ってきたな。 「まあいい。んで、あいつの見た竜がその邪竜だかなんだかとして、それが月姫の仕業だってのは何故だ」 「まあ何と言いますか。浮遊大陸、邪竜、父親の太陽王に対して月姫。何か気付かない?」 「さあ…暗号か何かか」 問い掛ける俺に対して、カイトは一つ溜息を付き、乾いた笑いで答える。 「重度の中二病なんだ、彼女」
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