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結論から言うと、竜はいた。
赤草ヶ丘の頂上近く、王者のような佇まいで腰を下ろしている。近くには、あの傭兵風の男と良く似た格好をした死体がいくつか転がっていた。
「ま…マジだ。おいカイト、マジもんの竜だぜ。うへえ、マジで醜いな、でかいコウモリだこれ」
「マジマジうるさいなあ。君はまじかるタルるーとくんか」
「まじかるタルるーとくんはそんな事言わねえよ。あと正しくはまじかる☆タルるーとくんな」
「マジカルミラクル系のタイトルって☆率高いよね」
「そうかあ?」
茶番はさておき、俺たちは点在している山小屋の一つに姿を潜め、竜を観察している。
「んで、どうすんだこれから。俺はちゃっちゃと撤収したい。いくら呪い人だからってあんなのに喰われたくねえ」
「うーん、街に危険が無さそうなら何処かへ行くのを待っても良かったのだけど…。実害、出ちゃってるしなあ」
散在した死体を見ながらカイトが言う。おそらく、あれが食い散らかした後なのだろう。想像したくもねえが。
「あんなのどうでもいいだろ。そもそもあの竜は、なんでこんな所へ来たんだ。迷子にでもなったのか?」
「恐らくだけど、符呪で縛られているね。目的を与えられているんだ。まるで何かを探してるみたい…な…」
奴と、目が、合った。
顔の中央に一つだけ付いてるぎょろりとした瞳。その単眼が、じっとこちらを見据えている。獲物を狙う、蛇のように。
「ヤッバ…」
「逃げろ!」
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