白の章 Ⅱ

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「状況変わらずか。おい、なんかいい手無えのか。小狡いの得意だろ」 「君は私をどう言う目で見てるんだ。まあ、手は無いこともないけれど」 「おおマジか。って、いや、やっぱいい。なんて言うか想像付いた」 こういう時、こいつは決まってこんな台詞を吐く。 「仕方がないから、奴を倒そう」 ほら出た。こいつは自殺志願者なのだ。 「言うと思ったわ…。真性の阿呆だな。三頭犬の時も、グリフォンの時もそうだ。放っときゃいいのに一々顔突っ込みやがって」 「そんな事いうなよ。ヒジリだって割とノリノリで退治してたじゃないか。修行の一環だとか言って」 「普通の魔物とあれを一緒にするか?言っとくがな、俺は倒せそうな奴しか倒さねえの。あんなのとどうやって戦えってんだ」 「奴の破壊力は確かに凄まじいが、そこまで機敏に動ける訳じゃ無さそうだ。死角もかなりある。刃さえ通れば、ヒジリの腕ならなんとかなると私は思う」 「お褒めの言葉ありがとよ。だが絶対嫌だ、俺は一人で逃げるね。あとは頑張りな」 俺はカイトに背を向け、逃走の姿勢を取る。さらばカイト、華々しく散ってくれ。 「あー、ヒジリ」 「なんだ、逃げるんなら付いてくんなよ」 「 上みてごらん、面白いから」 「あ?」 月の様に丸い瞳が、俺を見つめていた。
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