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全力で駈け、一閃。何処を斬ったか判らねえが、手応えアリ。奴の雄叫びが上がる。
「右、攻撃来るよー」
邪竜の太腕が俺の眼前を掠める。鬼のような風切り音だ。当たれば頭が吹っ飛ぶだろう。
「次は左ー」
少し視界が晴れてきた。奴が尻尾を振り被るのが見える。ならば、避ける事は容易い。
「反撃チャンスだ。胴がガラ空きになってるよ」
解ってるっての。だが、胴体は鱗が厚い。ならば関節近くを斬る!
「おお、すごいすごい」
刃が奴の片腕を貫いた。致命傷とまでは行かねえが、相当堪えたはずだ!このまま畳み掛ける!
「やれー、そこだー、ブッコロセー」
「テメエから先に殺してやろうか!」
煙も空に消え、夜が白み始めた頃、決着の時は訪れる。
眼前には満身創痍の邪竜が、しかし戦意を失わぬ目でこちらを睨み付けている。
「ふ。いい目してるじゃねえか。だが、そろそろ終局と行こうか、邪竜さんよ」
そう意気込む俺の横で、カイトが口を挟む。
「思えばこの竜も、少し可哀想な奴かも知れない。操られ、自分の意思も解らないままに殺されるなんて」
……この男は、散々煽ってた癖にぬけぬけと何を言うか。動物愛護バンザイ的な事言って人より好感度上げようとしやがって。邪竜よりよっぽどタチが悪い。
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