白の章 Ⅱ

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王や彼女達がいつから不老不死なのか、私は知らない。と言うより、本人達も覚えていないだろう。 考えて見て欲しい。何百年、いや、何千年かも知れない。何時までも老いず、何をしても死ねない。無限とも思える永劫の時をただ生き続けて、まともでいられる人間が居るだろうか? 王は、ただ民の幸せだけを願っていた。それでしか自我を保てなかったのだと思う。 二十年前も、本当は考える事すら苦痛だった筈だ。だけど王は、地上の平安の為に自らの手で月姫を封じた。 戦姫は戦い続ける事で、他の全てを忘却しながら生きていた。私と一緒になってからは死だけを見つめ生きた。 息子が産まれてからも、きっと何処かで死を望んでいたのだろう。月姫と戦い石になった時の嬉しそうな顔が悲しくて、悔しかった。私は結局、彼女の何もかも救う事が出来なかったのだ。 月姫は、自分を空想の世界へ投げ入れた。 彼女だけは、少し特殊だ。 自ら地上との関係を断ち、自分だけの世界を作り上げた。 他の事など知らない、知る必要もない。 好きな事だけを好きなだけ、飽きたらまた別の好きな事を。それが彼女の生きる道で、だからこそか彼女だけは、それほど自我を失わずに済んでいる。代わりに、最早人間とは呼べぬなにかに成り果ててしまった。
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