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「…楽しいか?」
勝ち誇った僕を、呆れたような顔でボサボサ髪のおっさんが見つめていた。
「あーいや、違うんすよ、こいつがね、卑怯な手をね」
「神父様!またクロウにいちゃんにいじめられました!」
「あっ、ルイてめえ!」
「よしよし、クロウにいちゃん大人気ないねー。クロウ、元気なのはいいけど仲良く遊べよ」
えっなにそれ。
僕と子供は同レベルですか。
小汚いオッサン…この孤児院の神父アクセルは、ぽつぽつ生えた不精ヒゲを抜きながら、大きな欠伸をする。
「こんな朝早くに起きてくるなんて珍しいですね。何かあったんですか?」
いつもならぐっすり寝ている時間だ。
「昨日の夜書簡があってな。城の方からお呼び出しだとよ。ったく、昼にしろってんだクソ」
「その言葉遣いいい加減直したほうが良いですよ、子供達が真似します」
「お前に言われたくはないわ」
一秒で論破された。
しかし城からか…。このオッサンはこれでも元は腕っこきの聖騎士だったらしく、今でも指南役としてよく呼び出されてはいるのだが、そんな事はどうでも良く。
むしろ重要なのは。
「神父さまー、おにーちゃん。お客さんだよー。お馬さんもいるよ?」
変わり者のマリーが足早に駆けてくる。彼女は目覚めるとまず外を眺める習慣がある。その為か、来訪者を一番に迎え入れる事が多い。うちの看板娘として一部の騎士達に人気だとかなんとか。
「早いな。ああ、めんどくせえ。もう少しゆっくり準備させろって」
「ありがとうマリー。神父、早く行きますよ!」
眠たそうなアクセルの言葉を食い気味に、彼の手を引き門扉へ向かった。
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