黒の章 Ⅰ

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「…楽しいか?」 勝ち誇った僕を、呆れたような顔でボサボサ髪のおっさんが見つめていた。 「あーいや、違うんすよ、こいつがね、卑怯な手をね」 「神父様!またクロウにいちゃんにいじめられました!」 「あっ、ルイてめえ!」 「よしよし、クロウにいちゃん大人気ないねー。クロウ、元気なのはいいけど仲良く遊べよ」 えっなにそれ。 僕と子供は同レベルですか。 小汚いオッサン…この孤児院の神父アクセルは、ぽつぽつ生えた不精ヒゲを抜きながら、大きな欠伸をする。 「こんな朝早くに起きてくるなんて珍しいですね。何かあったんですか?」 いつもならぐっすり寝ている時間だ。 「昨日の夜書簡があってな。城の方からお呼び出しだとよ。ったく、昼にしろってんだクソ」 「その言葉遣いいい加減直したほうが良いですよ、子供達が真似します」 「お前に言われたくはないわ」 一秒で論破された。 しかし城からか…。このオッサンはこれでも元は腕っこきの聖騎士だったらしく、今でも指南役としてよく呼び出されてはいるのだが、そんな事はどうでも良く。 むしろ重要なのは。 「神父さまー、おにーちゃん。お客さんだよー。お馬さんもいるよ?」 変わり者のマリーが足早に駆けてくる。彼女は目覚めるとまず外を眺める習慣がある。その為か、来訪者を一番に迎え入れる事が多い。うちの看板娘として一部の騎士達に人気だとかなんとか。 「早いな。ああ、めんどくせえ。もう少しゆっくり準備させろって」 「ありがとうマリー。神父、早く行きますよ!」 眠たそうなアクセルの言葉を食い気味に、彼の手を引き門扉へ向かった。
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