騎士の章 Ⅰ

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「クリス、落ち着きな。はい、深呼吸」 崩れ落ちそうになった私を、旧友が支えてくれる。 「…ジャンヌ」 思い切り息を吸い込む。 「あんたがカグヤ様を敬愛してるのは知ってる。小さい頃に命を救われた事も。だから気持ちは解るよ。けどねクリス、あんたには今やらなきゃいけない事が有るはずだ。違う?」 「ちがわない…」 「しっかりしなよ、リーダー。あんたが折れちゃ、あたし達まで駄目になっちまう。あたし達が知ってるクリスは、こんな事で曲がる程やわな女じゃない。何時でも真っ直ぐが、あんたの唯一の取り柄なんだぜ」 「…うん」 知らぬ間に涙目になっていた。少し恥ずかしい。 「ごめんね、ジャンヌ」 「いいってことよ」 でも、真っ直ぐが唯一の取り柄ってのは許せない。あとで喧嘩しよう。 うん、だから今は私の役割を果たすんだ。 余計な事は考えるな。 月獣が吼える。どうやら完全に私達を獲物と見なしたらしい。 「私がやる。あんたら下がってな」 「駄目です。ミラルダさんの武器じゃあれの弱点に届かない」 私は強い口調でミラルダさんを止める。 「何か策があるのかい」
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