騎士の章 Ⅰ

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戦闘は終始劣勢で進んでいた。 フレイのエンチャントは強力だけど、私の攻撃じゃ大したダメージにはならない。ミラルダさんでなんとか傷を負わせられる程度だ。 ジャンヌも疲弊している。私達が五体満足で居られるのは、彼女の治癒が常に私達を癒してくれているからだ。 だけどもうすぐ勝機が来る。私が何故近接戦を選んだか分かるかしら、狼さん。 衝撃を伴う咆哮と共に、稲妻が走る。業を煮やしたのだろう、もの凄い勢いで空から雷が落ちてくる。 よし、見えた。充分だ。 「みんな!後は頼んだわよ」 私は振り向き、精一杯の笑顔を作る。団長みたいには出来ないけれど、上手く笑えてたらいいな。 「クリス!何を…!」 思い切り踏み込み、さあ、ゼロ距離だ。フェンリル自身に流れる電撃で、私の片足が焼き切れてしまった。 畜生、痛い。身体中が焼けるように熱い。ジャンヌの治癒も、ここまでは無理か。 でも、これでいい。 「一本ぐらい、くれてやるわよっ!」 残った片足で踏ん張り、狙いを定める。倒れながらの不恰好な体勢だが、ここで振り抜けば私達の勝ちだ!
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