騎士の章 Ⅰ

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痛い。 こんなに強く叩かれたの、いつ以来だろう。 「何すんのよ…」 「うるさいバカ!もう知るか!」 ジャンヌは部屋を出て行こうとする。ちょっと待ちなさいよ、意味わかんない。 「ちよっとミラルダさん、離れてください。こら、待て馬鹿ジャンヌ…!」 追いかけようとして、気付いた。 身体が上手く動かない。歩くのが困難なくらいふらふらする。左右のバランスもおかしいぞ。どうなってるんだ。 あれ、ちょ、っと待って。 私の左足が無い。 おまけに左腕もない。肘の下あたりからすっぱり無い。 ふーむ、手も足も出ないとはこの事か。昔の人は上手い事言ったもんだ。いや、片方だけなら出るんだけれど。 「言っとる場合かー!なんだこれ!」 見事なセルフ突っ込み。いやいや冗談じゃないわ。なんでや、なんでこんな事になっとるんや。 「…あー、思い出してきたぞ」 そうだ、私フェンリルを倒して、そのまま倒れちゃったのか。確かにとれてたわ、足と腕。倒せた満足感ですっかり忘れてた。 んーでも、何故こんな所に?そうそう、そもそも此処は何処だ。謎が多すぎる。 「あのう、ミラルダさん、泣いていらっしゃる所悪いのですが」
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