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「美味い」
「当たり前だ。僕を誰だと思ってる」
「…そういう所、親父さんにそっくりだな」
ヒジリと名乗った白髪の男は、苦笑しながら僕に言う。
似てねーよ。親父と一緒にされるとは心外だ。
しかしこいつ、意外と良い奴で助かった。アクセルと違ってメシに文句も言わないし。一時はどうなる事かと思ったが。
何故僕がこの目付きの悪い、ついでに性格も捻くれてそうな男に食事を振舞ってやっているのか。話は、数刻前に遡る。
___
「あれ、ルイは何処行った」
何時もの夕食時。
一番に食器を構えている筈のルイが見当たらない。
「セシル、マリー、一緒に遊んでたんじゃないのか?」
「知らないー」
「ルノーは?」
「剣のれんしゅうするんだって、お昼は言ってたけど…見てないなあ」
「全く、あのやんちゃ坊主」
最近は魔物も多いし、盗賊が出たって噂もあるのに。何かあったらどうするんだ。
大方庭で剣でも振っているのだろうが、あいつがメシの時間を忘れるなんて珍しい。仕方ない、呼んできてやるか。
僕は料理の手を止める。
「兄さん、ちょっと来て!ルイが」
眼鏡のシャルロット。子供達の中では一番年上で、みんなのお姉さん的ポジションの女の子。彼女が慌てて食卓にやって来る。
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