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余談だが、僕の事をお兄ちゃんではなく兄さんと呼ぶのは彼女だけだ。彼女は最近大人びてきたので、少しむず痒い所がある。だからなんだと言う話だが。
話が折れた。今更本筋に戻した所で緊張感も何もないが、場面を進めよう。
「シャルル、ルイがどうかしたのか?」
「日も暮れてるのに外で剣の練習をしてたから、迎えに行ったんだけど…。変な人に絡まれてて」
「なんだって!」
言わんこっちゃない。
僕は大振りの鉄鍋を手に取る。マトモな武器は蔵にしか無いが、時間が惜しい。盗賊や蛮族なら此れで蹴散らしてやると意気込み、外へ向かう。
「お兄ちゃん、ご飯はー?」
「待ってなさい!」
ガキ共が居るとどうも緊張感に欠けるな。
「あいつか」
成る程、怪しい輩だ。
門扉の前で、そいつとルイが何やら言い争いをしている。賊らしい薄汚れた格好に、異国の武器を携えた白髪の男。歳の頃は僕とそう変わらないくらいか。
特徴的なのは、その凶悪な面構え。子供を人質に押し込み強盗でもやり兼ねない。いや、其れが目的に違いない。なにせ目付きが悪過ぎる。あれは犯罪者の顔だ。
「ようし」
ここは先手必勝だ。僕は鉄鍋片手にそいつへ殴りかかる。
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