黒の章 Ⅱ

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「あ、クロウにいちゃん」 飛び掛った僕に気付いて、ルイが振り向く。 「危ないから離れてろ!」 呆けっと突っ立っているルイを押しのけ、男へ鉄鍋を振り下ろす。悪いが、気絶でもしていて貰おう! 鈍い音と共に、奴の頭に鉄槌が下る。筈だったが。 「んなっ!?」 僕の鍋を柄で止めただと! 「いきなりなご挨拶だなぁ、おい」 口を歪ませ男が嗤う。くそ、なんて凶悪なツラだ。絶対何人か殺してる。 「賊にしてはやるな!だが、僕の庭で勝手が通ると思うなよ。ルイ、僕の剣を取ってこい!」 「ねー、にいちゃん」 「おいおい、俺は賊なんかじゃねーよ。ちょいと訪ねたい事が」 「問答無用!」 秘技、鉄鍋乱舞。長年の料理スキルで身に付いた技、貴様に見切れるか! 「おい、ちょっと、待てって」 僕の猛攻を、男は軽々と受け流している。くそ、こいつは鞘すら抜いて無いってのに。これが鍋の限界か! 「僕の剣はまだか、ルイ!」 「だから違うってにーちゃん、落ち着いてよ」 「何が違う!こいつはお前を殺そうとしてるんだぞ!」 「おい」 「あっ!」 ルイに気を取られている内に、男は僕の腕をがっちり掴んでいる。 「離せ、僕にそっちの気は無いぞ!」
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