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「あ、クロウにいちゃん」
飛び掛った僕に気付いて、ルイが振り向く。
「危ないから離れてろ!」
呆けっと突っ立っているルイを押しのけ、男へ鉄鍋を振り下ろす。悪いが、気絶でもしていて貰おう!
鈍い音と共に、奴の頭に鉄槌が下る。筈だったが。
「んなっ!?」
僕の鍋を柄で止めただと!
「いきなりなご挨拶だなぁ、おい」
口を歪ませ男が嗤う。くそ、なんて凶悪なツラだ。絶対何人か殺してる。
「賊にしてはやるな!だが、僕の庭で勝手が通ると思うなよ。ルイ、僕の剣を取ってこい!」
「ねー、にいちゃん」
「おいおい、俺は賊なんかじゃねーよ。ちょいと訪ねたい事が」
「問答無用!」
秘技、鉄鍋乱舞。長年の料理スキルで身に付いた技、貴様に見切れるか!
「おい、ちょっと、待てって」
僕の猛攻を、男は軽々と受け流している。くそ、こいつは鞘すら抜いて無いってのに。これが鍋の限界か!
「僕の剣はまだか、ルイ!」
「だから違うってにーちゃん、落ち着いてよ」
「何が違う!こいつはお前を殺そうとしてるんだぞ!」
「おい」
「あっ!」
ルイに気を取られている内に、男は僕の腕をがっちり掴んでいる。
「離せ、僕にそっちの気は無いぞ!」
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