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やっぱりあいつの息子だな、と余計な一言を残して、ヒジリは出て行った。
「ふん」
あーあ、やだやだ。なんで呪い人ってのは、どいつもこいつも陰キャラが板に付いてんのかねえ。
そりゃまあ、苦労してるんだろうさ。僕だって、ガキ共の事が無けりゃあ、あいつに辛く当たってたかも知れないからな。
何処で産まれたのかも分からなくて、気付いた時には周りの全員が敵で。側に在るのは悪意と蔑み、人々の嘲笑。
あんな眼になる気持ちも分からなくはない。深い闇の底で、絶望だけを見つめてきた様な、紅い瞳。
だけどさ、それでも幸せになる権利は有るじゃないか。誰にも祝われないから、呪い人だから、そんな理由だけで、不幸である事を受け入れるなよ。人は誰だって、幸せになるために生きているんだ。
幸せを噛み締める為に生きているんだ。
だからメシ食って、幸せを噛み締めて、今度はもう少し柔らかな顔になって来いよ、ヒジリ。そうしたら、とびきりのご馳走を作ってやる。アクセルが飛び上がるくらい美味い奴だ。
ガキ共と、楽しみに待っててやる。
「なあ、お前ら」
子供達の寝室を覗く。皆、幸せそうな顔で眠っている。
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