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「あ、兄さん。私出るわ」
「どうしたシャルル、珍しい」
「寝坊しちゃったからこれくらいはねー」
「あ、おい」
ぱたぱたと足音を立てて、彼女は玄関へ向かう。ああもう、かわいいなあ。
「クロウにいちゃん、初期設定わすれてない?」
「何、そんなものが有ったのか?」
「僕は子供が嫌いだ、とか、冒頭でかっこう付けて言ってたよねー」
ああ、嫌いだね。なんだい、ちょっとニヒルなキャラを演じてみたからって、小馬鹿にしやがって。そもそも、未だに僕のキャラ付け固まってないんだぞ。子供なんて大嫌いだ畜生。
「何をぶつぶつ言ってるでおじゃる」
「何でもないですー」
「あらあら、こんな所に同胞が沢山。来て正解だったわあ」
「大体お前らはなあ、僕に対する態度ってものが…ん?」
誰だ?さっきの台詞は。
「こんにちは。お邪魔だったかしら」
腰まで届くような銀色の髪に、血の色をした綺麗な瞳。彼女は、聖母のような微笑みで僕達の前に現れた。
「えっと…どちら様でしょう」
先程の声の持ち主だろうか。シャルロットは一緒じゃないのか?
「あの、迎えの者が行った筈なのですが」
「ああ、可愛らしいお嬢さんの事?あんまり素敵だったから、貰っちゃった」
言葉が出なかった。
彼女の右手に、微かに脈打つ心臓が一つ、握られている。
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