黒の章 Ⅱ

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「あ、兄さん。私出るわ」 「どうしたシャルル、珍しい」 「寝坊しちゃったからこれくらいはねー」 「あ、おい」 ぱたぱたと足音を立てて、彼女は玄関へ向かう。ああもう、かわいいなあ。 「クロウにいちゃん、初期設定わすれてない?」 「何、そんなものが有ったのか?」 「僕は子供が嫌いだ、とか、冒頭でかっこう付けて言ってたよねー」 ああ、嫌いだね。なんだい、ちょっとニヒルなキャラを演じてみたからって、小馬鹿にしやがって。そもそも、未だに僕のキャラ付け固まってないんだぞ。子供なんて大嫌いだ畜生。 「何をぶつぶつ言ってるでおじゃる」 「何でもないですー」 「あらあら、こんな所に同胞が沢山。来て正解だったわあ」 「大体お前らはなあ、僕に対する態度ってものが…ん?」 誰だ?さっきの台詞は。 「こんにちは。お邪魔だったかしら」 腰まで届くような銀色の髪に、血の色をした綺麗な瞳。彼女は、聖母のような微笑みで僕達の前に現れた。 「えっと…どちら様でしょう」 先程の声の持ち主だろうか。シャルロットは一緒じゃないのか? 「あの、迎えの者が行った筈なのですが」 「ああ、可愛らしいお嬢さんの事?あんまり素敵だったから、貰っちゃった」 言葉が出なかった。 彼女の右手に、微かに脈打つ心臓が一つ、握られている。
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