プルプル

4/11
前へ
/13ページ
次へ
怪しすぎるだろう。 僕が怪訝な顔をすると、睦子は「いいよ、菊池がなんと言おうと、私は今夜試してみるから」と拗ねて、ぷくっと頬を膨らませた。 「優しそうなお爺さんだったから、大丈夫だよ」彼女は根拠のない自信に満ち溢れている。 スマホを取り出し、プルプルについてネット検索してみたが、当てはまるような噂はなかった。 不特定の人を狙った毒殺事件なんて、この地区で起きた形跡はないし、悪質な悪戯だとしても、腹を壊す程度だろうと高を括る。 「解った。睦子に付き合うよ」 その1粒を受け取ると、睦子は満足そうに微笑んだ。 その夜、僕はベッドに潜り込むと、プルプルの包装紙をゆっくりと開き、中の粒を確認した。 触感は相変わらずプニプニしている。匂いを嗅いでみると、熟れた果実のような甘い香りがした。どこかで嗅いだことのある懐かしい匂い。 僕はそれを口の中に放り込むと、そのまま仰向けに寝転がった。 食感はキャラメルと違って、固いゴムみたいだ。 舌の上で転がしながら舐めていると、突然、プチンと弾けて、中から甘酸っぱい、濃厚な果汁が口の中に広がった。   僕が覚えているのはここまでで、次の瞬間には、全く違う場所にいた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加