プルプル

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  睦子と連絡が取れなくなって3日が経っていた。   メールの返信もないし、電話を掛けても留守電になってしまう。 学校にすら来ていない。   イライラが募り、目の前のものに、つい八つ当たりをしてしまう。   普段は温厚なはずの自分が、こんなにイライラしている原因が、僕には解っていた。 睦子が僕を無視し続けているのに怒っている訳でない。   睦子の持っているプルプルが欲しい。   欲しくて欲しくてたまらない。僕は中毒者のような症状に苛まれていた。 プルプルを舐めて、目覚めた朝は素晴らしかった。新しい世界が始まったかと思うくらい、目に映るものが輝いた。頭が冴えて、体が軽かった。何でもできそうな気がした。   けれど、調子が良かったのはその日だけで、夜になり、ベッドに潜り込んだところで、プルプルが舐めたくなった。 昨日の夢の続きを見たい。暗闇の中でじっと天井を睨みつけて、プルプルがどんな味だったか思い出そうとしたけれど、どうしても思い出すことができなかった。 プルプルを舐めたい。 けれどプルプルを持っているのは睦子だ。
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