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「そんな乱暴に一括りされるほど雑な仕事はしていないのですよ。因果応報もあれば、運命と呼ばれるただの偶然もあります。我はそれらそれぞれの連なりに少し干渉しただけなのです」
瑞兆は平然と言い切った。
「つまり、全てに関わったのだな」
信長は十一月という季節から来る以上の寒気を感じた。
「心配せずとも、揺り戻すほどの大きな力は使っていないのですよ。因果応報というか、自業自得に関しては、ほとんど我は手を添えるだけ。今年は色々な事象が衝に入ったというべき状況にあり、澱み無く事が運んだというだけのことなのです」
よく分からぬ言葉もあったが、とにかく瑞兆は、大して力を行使していないと言っている。それでここまでの結果を招き寄せたということだ。
「信光叔父の死を朗報と申したな。弾正忠家にとって痛手ではなく、朗報と」
「明らかに分不相応な領地を要求し、あるじ殿への接し方が変わった不穏分子だったではないですか。それに……」
瑞兆の方こそ、穏当ではない顔付きとなった。
「あの者は、あるじ殿が家督を継いだ直後に暗殺を試みているのです。まさに因果応報、当然の報いなのですよ」
瑞兆は、衝撃の事実をさらりと言ってのけた。
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