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赤塚合戦の後、早くから信長支持を表明し、曲がりなりにも最近までは律儀な後見役にも見えていた信光が、裏で信長の暗殺を試みていたというのだ。
「であるか……」
もはや誰を信じればよいのか分からなくなる事実であった。
「もしや、秀孝もか?」
松川の渡しで頓死した織田秀孝は、同腹の弟だった。
「まさに同じく」
かつて大和守家が那古野城に刺客を送り込み、信長のみならず帰蝶=吉兆をも襲撃したことがあった。その報いで大和守家が滅び去ったというのは考えられたが、一門衆の死の裏に同様の事情が隠れていたとは知らなかった。
不意に乾いた笑いが込み上げて来る。家督を巡り、非協力や追放どころではない一族の暗闘を知ったのだ。
「因果応報か。皆、俺を殺そうとして報いを受けたという訳か」
先に瑞兆に対し、『皆殺し』ではないかと呆れていたが、瑞兆がいなければ信長が『皆殺され』であったという訳だ。
妙な笑い方をする信長に、瑞兆が心配げに忠告する。
「あくまでも、今年は巡り合わせが良かったのです。いつでも出来る訳ではないので、油断は禁物なのですよ」
それはそうであろう。こんなことがいつでも出来るなら、この家督相続以来の悪戦苦闘は何だったのかということになる。
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