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とはいえ、瑞兆がこの春に宣言したことは、全き現実となった。
信長は清洲城に鎮座しているだけで、今年は躍進の年になるという、予言ならぬ宣言である。
天文改め弘治元年となったこの年、信長は尾張下四郡の守護代織田大和守家を滅ぼし、その伊達役者であった叔父信光は帰らぬ人となった。
那古野城を含む庄内川以東の権益については、信光との密約であって信光の家督の内には入っておらず、信長がほぼ全てを取り戻すことになった。
蟹江城を奪取し、尾西からの侵攻を本格化させるつもりだった今川家の太原雪斎も倒れている。
父信秀の代からじりじりと西三河、尾南を侵食して来た今川家の圧力も当面は緩むことになるだろう。
本当に、信長が清洲城に鎮座している間に、尾張下四郡の情勢は目に見えて好転したのだった。
「出来過ぎじゃ」
「それは誉めているのですか」
瑞兆自身が輝きを増す。
『お前が居なければ、俺は今頃……』
口の中で呟いた後、信長は叫ぶように声を張った。
「今年の働き見事であった!これからも頼むぞ」
「勿論なのですよ」
瑞兆は文字通り舞い上がった。
この年の出来事について尾張国内では、信長による謀殺説や謀略説が実しやかに囁かれるようになっていった。
もはや信長を侮る者は稀となり、次第に警戒と畏怖の対象となっていくのである。
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