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「我は、そなたと共に消えるのです。伝えたければ生還して」
信長は襲い来る敵足軽を手にした槍で薙ぎ払った。
「無茶を言うな」
気が付けば、周囲の敵が全て信長を目指していた。
「皆先に行ったか」
更に二人を薙ぎ倒す。
瑞兆の加護の残滓かも知れない間が出来た。
家督相続以来の足跡が走馬灯のように蘇る。
これで後世、語り継がれる生き様を刻めただろうか。
「出来ればもう少し長く、いや」
信長は苦笑した。
「今のは無いっ」
薄れ行く光点の集まりを纏い、信長は足を止めた。
完全に取り囲まれたようだ。
「「いや」」
そして。
無数の槍先が信長に迫るところが、最期に見えた光景だった。
「「いやあああっ、信長様ぁ!!」」
永禄三年五月十八日払暁。
吉兆は自らの絶叫で目を覚ました。
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