第1章

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木蓮の季節が終わる 庭先にある二階屋根まで伸びた枝先から 肉厚の花びらがひらひらとはならず トサトサと春風に攫われて落ちてくる 一斉に咲き、真っ白に咲き誇った白木蓮の期間は短く 茶色に変色し地面に散る この時期の草花は競い合うように育っていく 公園の桜がいつの間にか三分咲きになり 花壇にはスズランが香り、クローバーは瑞々しさを讃え 絵の具のようなグリーンで太陽に沿って開き繁り出す ムスカリの花がふさふさとした葉の隙間から顔を出し アイビーゼラニウムが朱色のアクセントでポーチを飾る ーーー春 この時期、生まれ故郷の野や山を思い出す 何故か浮かぶのは華やかな花ではなく 道ばたの地味な草花 そこにはキラキラしいものは今ひとつだが 香しき早春の息付きと、移る季節の記憶がある ふきのとうの白い花 道脇のホトケノザ 可憐なスミレにカラスノエンドウ ひっそりとすゞやかな風に揺れ春を生きる 子供の頃の記憶の片隅に登場する草花達 あなたはどんな春の花がお好みだろうか +++ 春の一句 +++ 想いでの野原に眠る微笑みは蓮華草の花の冠                 白猫野
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