第3章

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母親も、『誰それさんとこに孫が出来た。可愛い。私も元気なうちに世話したい』とダイレクトにメールをしてくる訳だが、「そういう年齢なんだな」と思う反面、「俺には無理だな」と思ってしまう。 おかん。 申し訳無いが期待には応えられなさそうだ。 それより、内孫より外孫って言うだろ?真美に期待してくれ。 あ、真美ってのは、4つ下の妹です。 短大を出て、民間の銀行に勤務して5年。 女子の場合、5年も経つと周りの見る目が違ってくるらしい。 『真美ちゃんは彼氏いるよね~。そろそろ寿退社かな~?デキチャッタが先かな~?』 昔ほどではないにしろ、上司という傘のもと、スケベったらしく言われることもあるそうで、今度言ってきたらセクハラで訴えてやる!と妹は息巻くが、実際、訴えるってのは勇気がいる。 訴えるべく被害を受けた側が、訴えたことで逆に職場に居づらくなってしまう、なんてのはよくある話だ。 人間ってのは身勝手な生き物で、騒ぐ時は『わかる、わかる!』なんて煽っておきながら、いざとなったら逃げていく。 都合の良い加勢は大歓迎。 だけど逆の立場になったなら、見事なまでに知らん顔、という訳。 人間は弱い。 が、その分、頭が良い。 自分にとって損か得か、瞬時に嗅ぎ分ける鼻を持つ。 それもこれも、我が身可愛さが引き起こす『保身』なんだろう。
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