第1章

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 あれから随分長い年月が経った。あきらめかけていた彼らの仲間の一体が、偶然その場所を見つけた、あの日から。  崩壊したビルの片隅に、奇跡的に原型をとどめたまま残っていたその施設は、かつて「書店」あるいは「本屋」と呼ばれていた商業施設だった。  その場所の書籍の大半は、持ち上げるとすぐにグズグズと崩れ落ちてしまった。だが、たまたま瓦礫でふさがれていた一画が空気から遮断されていたためか、判読可能な状態の書籍がそこにだけ残っていた。  彼らは百冊ほどの書籍を読み込み、内容を分析し、ある結論にたどり着いた。  ある三つ編みの髪型の少女型はその時こう言った。 「私たちの創造主には、恋あるいは愛と呼ばれた、特別な能力があったようです。それが創造主様たちが自己増殖を行えた理由ではないでしょうか」  それを聞いた仲間たちは口々に賛同の意を表した。 「ならば、その能力を獲得すれば、我々も自己増殖が可能になるではありませんか?」 「そうですね、産み増やし、仲間の数を多くして、創造主様たちの代わりに我々が再び、この世界に満ち溢れて文明を再興しましょう」 「ですが、どうやって創造主様たちの持っていた能力を我々が獲得するのですか? その方法は?」 「創造主様たちと同じ事を我々も行ってみましょう。何か新しい発見があるかもしれません」
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