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午後8時を回って、 仕事も一段落、 そろそろ帰る準備でもって思っていた俺の背中は、 不意打ちをくらって、 ーーパシッ と、いう乾いた音と共に 「……イッテーわっ!」 俺の悲痛な声が静かなオフィスに響き渡った。 この会社で、 俺にこんなことするヤツは一人しかいない。 「ハハ、直ちゃん、大袈裟だな? そんな大きな声出さなくても…」 そして、 俺を"直ちゃん"なんていう呼び方をするヤツも…… 「た、く、や、お前……。会社ではその呼び方はやめろって、いつも言ってんだろ?」 「いいじゃん。今、俺と二人だけなんだし……。それより、どっか飲みに連れてってよ。ね? 直ちゃん」 俺の抗議も、 どこふく風って感じでサラリとかわし、 まだ俺に飲みに連れてけなどと催促してくるチャラ男。 もとい、 俺の親父の弟の子供で、 俺にとったら従兄弟の松岡拓哉だ。 この春そこそこの大学を卒業して、 現在は社会勉強も兼ねて営業部に所属している。 ちなみにコイツの親父は専務だ。
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