*1*

12/19
前へ
/452ページ
次へ
もう何をしても無駄だと思って、 大きな声を出そうかと思っていたところへ、 通りがかりの若い男が声を掛けてきた。 「ねぇ、ねぇ、オッチャン達、なに女の子に絡んでんの~?」 そして、 オヤジの近くまでくると、 舞の腕を掴んでるオヤジの腕を捻り上げた。 「イタッ、なんすんだ、このヤロッ!」 腕を捻り上げられたオヤジが、 いきがって若い男を見上げるも、 「あぁ、ごめん、ごめん。そんなに痛かったぁ?」 「……っ…、」 身長差があることに気づいたのか、 怯んで押し黙ってしまった。 それに、 道路側でちょっと薄暗いし、 若い男ばかりに気を取られて気づかなかったんだけど、 近くにもう一人長身の若い男が居て、 私のバッグを掴んでいたオヤジの動きも封じてくれていた。 急な出来事に私も舞も放心してしまっていたら、 その間に、三人組のオヤジは尻尾を巻いて退散したようだった。 ホッとして胸を撫で下ろしていた私達に、 「あれ? スッゴい奇遇じゃん!」 助けてくれた若い男が馴れ馴れしく声を掛けてきた。 あれ? どこかで聞いたことがあるような気がするんだけど……。 ゆっくり声の方に視線を向けると、 松岡主任と営業の松岡拓哉が、 そこに並んで立っていたからびっくりだ。
/452ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6984人が本棚に入れています
本棚に追加