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「一一日本食品の相川って、知ってるか?」
怖いもの見たさみたいなもんだろうか、
取引先とはいえ直接接点のない、
それも電話で一度しか話したことのない相川のことを
コイツが覚えているのかが気になったから聞いただけのことで、
ただの興味本位で、別に他意はなかった。
助手席側の窓の外を睨みつけるように眺めていた黒木が、
急に話しかけられ、驚いた表情をガバッと俺へと向けてきた。
といっても、
暗くてハッキリとは見えねぇけど。
「……え、あの、相川さんって、たしか相川社長の息子さんで、主任の同級生の方ですよね?」
唐突に、
そんなことを聞いた俺の意図が解らないって感じで、
困惑気味に聞き返してきた黒木の言葉を聞いた途端、
黒木が相川のことを覚えていたのが
何故か面白くなくてーー、
「ヘェ……。相川のこと、良く知ってるんだな?」
そんな自分の感情を抑えることができなかった俺は、
不快感丸出しの声を出してしまった。
本当は、
上司として、
ちゃんと覚えていた黒木のことを、
褒めてやらなきゃいけねぇ立場だっていうのに……。
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