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もうすぐ午後5時って時に、
デスクでPCに向かってデータの入力をしていると、
まるで、それを邪魔するように事務員からの内線が鳴り響いた。
ふぅ……と溜め息を吐き出しながら、
力なく受話器へと手を伸ばして出ると、
案の定、コンビニに出荷した弁当のクレームで、
急遽、商品の回収に行くことになってしまった。
……が、
俺が今やってる仕事は、
得意先への提出期限が迫っているため、
回収なんてとてもじゃないが無理だ。
そこで俺は、
以前高岡芽依が使ってたデスクに座って書類の整理をしているであろう……
黒木愛(クロキ アイ)に視線を向けた。
この春、四大を卒業したばかりの新入社員だ。
「黒木愛、ちょっといいか?」
「はい」
シッカリとした口調で返事を返してきた黒木愛は、
ストレートの長い黒髪を右耳に掛け、
俺の方へと顔を上げると、
パッチリとした黒目がちな大きな瞳を、
真っ直ぐに射抜くようにして向けてきた。
まだ入社して二月ほどしか経ってはいないが、
仕事熱心で、覚えも早く、とても優秀な部下だ。
まぁ、まだまだ、
指導して改善すべきところは沢山あるのだが……。
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