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これ以上、 主任のことを意識したりしないように、 窓の外をぼんやりと眺めていると、 別に見たい訳でもないのに、 週末ということもあって、 カップルが幸せそうに寄り添う姿が どうしても視界に入ってきてしまう。 二十二年間生きてきて、 彼氏が一度も居なかった訳じゃないけど……。 居たって言っても高校の頃のことだし、 あんまり思い出して懐かしむような良い思い出なんてなかったし。 できることなら、 なかったことにしたいくらいのものだったし……。 色々考えてしまってたせいで、 思い出したくもないことまで思い出してしまって。 浮かんできてしまった全部を振り払いたくて、 無意識に頭をフルフルと振ってしまってたようで、 それを 「ふっ。お前、何頭振ってんの?」 なんにも言わずに運転に集中してた筈の主任に気づかれてしまい。 さっきまで、 無表情で不機嫌そうだった主任が、 吹き出して話しかけてきたかと思えば、 無意識なのか、 スッと伸ばしてきた手で頭をポンポンってされて。 いつもは、 子供扱いされてるようで…… 嫌で仕方なかったことだった筈なのに。 不意打ちで優しく撫でられ、 その手から…… あたたかさと一緒に主任の優しさが伝わって、 心に沁み込んで来るようで、 泣くつもりなんてないのに、 勝手に涙が零れ落ちてしまった。
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