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主任のあったかい腕に優しく包まれた瞬間、 香水とはまた違った、 微かに香る優しい甘い匂いに鼻腔を擽られて、 頭がクラクラとして酔ってしまいそうになる。 それでいて、 ジワジワと身体にまるで染みこんでくるような、 トクン…トクン…と一定のリズムで、 主任の心地いい心音が響いて伝わってくると、 ずっとこのまま、 この心地いい腕の中に居たい なんて思ってしまうくらい…… 居心地が良すぎて怖くなる。 こんなに優しく抱きしめられちゃったら…… 主任のことをもっともっと 今以上に好きになってしまうじゃないか……。 私のこと、 ただの部下としか思ってないクセに……。 好きでもなんでもないクセに……。 悔しいけど、 主任にとったら、 こんなの大したことじゃないんだろうけど、 こんなこと簡単にしないで欲しいのに……。 主任の腕の中から、 なんとかして早く抜け出したくて、 主任の胸に両手をついて 必死に突っぱねながら言ってみるも、 「……ヤダ、離してっ!」 「そんなに強がってないで、たまには素直に甘えてみろよ? お前、いつも気ぃ張りすぎなんだって…」 まるで、 小さな子供に優しく言い聞かせるように言うだけで、 少しも離そうとはしてくれない。 主任の優しい言葉に、 余計涙が出そうになってしまう……。
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