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流れる涙も構うことなく、 必死になって訴えかけてくる黒木の言葉に、 何故か言いようのない寂しさを感じてしまった。 また、 そんな風に感じてしまう自分に戸惑ってしまう……。 黒木に言われた通り、 俺はただの上司ってだけの立場でしかないのに……。 さっきからなんなんだよ? これじゃぁ、まるで俺が、 黒木のこと好きみたいじゃねぇかよ? もしかして、 俺、黒木のこと、 同じ部下だった高岡芽依の身代わりにしてんのか? 見た目もタイプも何もかも違うって言うのに? ……イヤ、 そんな訳ねぇよな? やっぱり、 酔っ払い黒木が弱いところ曝け出した姿見ちまったからか? ーー自分のことなのに よく解っかんねぇよ……。 色々と、 理由を引っ張り出してきては、 頭ん中で自問自答を繰り返していると、 「ちょっとっ! 聞いてんの? 早く離してって言ってんでしょっ? このセクハラ上司っ!」 泣きながら怒ってる黒木の声が耳に流れ込んできて、 ハッと我に返った俺が腕の力を緩めたら、 それに気づいた黒木が、 膝の上に乗せてたバッグを振り上げたかと思った ーー次の瞬間、 ものの見事に俺の顎へとクリーンヒットして。 俺はその場で、 片手で顎を押さえたまま悶絶することとなった。 「……っ…」 そんな間抜けな俺に気づくことなく、 泣きじゃくって顔をグシャグシャにした黒木が、 パタンとドアを閉めると振り返ることなく走り去っていく。 俺は、 遠のいていくその後ろ姿を 顎の痛みを堪えながら、 ジッと見つめ続けることしかできないでいた。
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