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ーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーー ーーーーーーーー ーーーーーー ーーーー ーー 黒木が走り去ってしまってから、 どれくらいの時間が経ってしまったのか…… 黒木の後ろ姿が見えなくなってからも、 ただ茫然としてしまって動くことができなくて。 あんなに痛かった筈の顎の痛みなんて、 もうどっかに吹き飛んでしまっていた。 もう今は、 そんなことなんかよりも、 いつのまにか黒木に対して持ってしまっていた自分の理解しがたい感情に ーー戸惑いしかなくて……。 でも、 その感情が恋愛感情だとすると、 黒木のことが気になってしまっていたことへの納得がいく訳で……。 けど、 いつからだ? それに、 部下である黒木に恋愛感情を持ってしまってるとして、 俺、 さっき確か、 黒木に思いっ切り”セクハラ上司”とか言われてたよな……。 あー、 俺って、 どうしていっつもこーなんだ? 上司としても、 男としてもダメダメじゃねーかよ……。 想いに気づいてしまった途端、速攻で失恋かよ? このどこにもぶつけることのできない感情を持て余した俺は、 項垂れ凭れてた目の前のハンドルに そのなんもかもを思いっ切りぶつけた。 「くっそっ……。イッテーよっ!」 ハンドルを強く叩き付けた手の痛みなんかよりも、 さっき黒木から思いっ切り食らってしまった、 胸の痛みの方がずっとずっと痛く感じられた……。
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