未来(あした)へのステップ(最終回)

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食べるだけ食べたら、アリスと若葉ちゃんは出て行った。 野球部の取材とか言ってたよ。差し入れ目当てでフラ部に来るのは、ホントやめて欲しい。 「じゃあ、僕も失礼します」 「え?もう帰るの?見学してけば?」 「特に小波の。よね?渚」 からかう花衣と渚が悪い顔だ。すっかり弄られキャラだよね、菜花くん。 「いえ、その、見学したいですけど、父の手伝いと言うか、患者さんとの触れ合いと言うか…」 そうだよね、菜花くんの出してくれるカテキン茶は、菜花歯科医の名物だもの。 小波の付き添いした時、お婆さんもお姉さんもお母さんも、みんな喜んでた。 それは彼の優しい心が伝わるからだろう。 「待てよ薫、校門まで送るぜ」 「いえ、そんな…」 「遠慮すんなって!差し入れのお礼だよ」 2人の背中を見送るあたし。どっちが男子だか分からなくなりそうな関係だ。 小波…少しは女の子らしくしようよ。 「いやあ、あれはどっちが男子で女子なのか分からないッスねぇ」 「そうだよねぇ…て!?だだ、誰!?」 いつの間に部室の中に!? 忍者!? 「あんた誰よ?部外者は立ち入り禁止よ?」 花衣が身構える。 ショートの髪に花飾りのヘアアクセ。 目は少し吊り上がり、身長は穂波ちゃんよりちょっと高い。 こんな子、海翔に居たかな? 「さっきの人らも部外者っしょ?」 「そ、それは…それより、あんた1年生!?とこのクラスか言いなさい!」 「おー、こわ。クラスって言われても困るッスねぇ、まぁ強いて言うなら…」 その子はニヤリと笑い、そして答えた。 「小浜2中、3年2組…結城恵(ゆうき けい)ッスよ。来月から海翔高校の生徒になるッス。よろしく、先輩たち」
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