389人が本棚に入れています
本棚に追加
男性が、自分の鞄に手を伸ばす。
「今のは独り言? 声に出てたけど」
(――っ! 恥の上塗り!)
顔が上げられなかった。
誤魔化せない。とにかく、謝ろう。
「重ね重ね、済みません!」
謝り逃げしてしまおうと、口早に言って頭をしっかり下げた。
「重ね重ね? 他に何を?」
(これは――墓穴でしたね)
三脚のことは隠せたかも。
自分のおバカさに呆れて、口ごもる。
「……三脚、倒しかけました。地面に置かれているペーパーバッグの中身が、見たくなりました。
お持ちの鞄が羨ましくて、声に出てしまいました。ごめんなさい!」
最初のコメントを投稿しよう!