12人が本棚に入れています
本棚に追加
徐々に感覚が覚醒してくる。
草と土の匂いが鼻につく。
自分が堅い場所に寝転がっているのが分かる。
うつ伏せで寝ていた俺は地面と思わしき場所に両手を付いて、上半身を起き上がらせた。
(ど、こだ……ここ? 確か通学中に目眩が…)
キョロキョロ首を回していると、周辺は丈の高い草が生い茂っている。
自分が寝ていた場所だけポッカリと地面が覗いていた。
頭上を見上げた時、それを見て呆気に取られる。
(そんな筈、無いだろ?)
深呼吸した俺は転がっていた眼鏡をゆっくり拾う。
レンズをシャツの裾で拭いてから、眼鏡をしっかり掛け、もう一度空を見上げる。
でも、事実は変わらなかった。
太陽が2つある。
月っぽい白いのが浮かんでいて数えると太陽入れて6つもあるのだ。
(いや、俺は夢を見ている。そう夢、夢だっ)
首をブルブルと振り現実を認めまいとした。
(最近疲れていたし寝不足で体調も最悪だったから)
「きっとそうだ……」
内心で自問自答していたつもりが思わず声を出していた。
周りを確認しても眼鏡以外は自分の私物は落ちていない。
むき出しの腕に擦り傷があってヒリヒリ痛い。
もう一度同じ場に寝そべり留まる事にする。
ジッと動かずに居ると、うとうとするが、ハッと覚醒して飛び起きる。
時間が経過してくると、走って汗を掻いたせいか喉が乾いてきた。
夢だと結論付けていても、リアルなこの感覚に不安が擡げてくる。
自分の背丈程ある草を掻き分けて進むにしても、こういう場所というのは、何か出そうである。
例えば蛇とかグネグネしたものが……。
そこで、草をよくよく見ると、今までに見た事がない植物だった。
葉っぱは細長くて先が尖っていて青緑色。
飛び跳ねて草の向こうを確認したが、草原が広がっているだけだった。
自分が小人にでもなったような心地だ。
そして太陽が傾き薄暗くなるまでそこから動かずにいた。
早く目覚めてくれと祈りながら起き上がり体育座りをして膝に顔を埋める。
最初のコメントを投稿しよう!