第四話 最強の存在

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中学の時からだ。 岸が嬉しいそうにその人の写真を見せるから、 次第に俺はその人に苛立ちような感情を覚えるようになった。 今思えば、それは嫉妬だったんだろうな。 その人の写真は、岸の家の玄関と居間と岸の勉強机の上の、全部で三ヶ所に置かれていた。 そして、全ての写真の傍には綺麗な花が飾られていた。 その時の俺はもう中学生で、その写真と花の意味をある程度の予測はしていた。 そして、その予測が確信に変わる前に、俺はその人の写真を見る度に、どす黒い感情を抱いた自分を殴りたくなった。 その人は岸の隣で話すことも、笑うことも、何もできないんだと。 それに引き換え俺は、岸の隣で話すことも、笑うことも、何でもできるんだと。 岸の最強に、俺は少し勝った気がした。 でも、それはほんの一瞬で、 ガラスに反射した自分の顔の醜さを見たと同時に、 その後に何倍もの後悔が俺に押し寄せてきた。 それから、俺は、その人の写真を見る度に、その反射した自分の顔を笑顔にする努力をした。 岸の最強の存在と、対等になりたかった。 眩しいくらいの笑顔を向けるその人に、少しでも抵抗したかったのだ。 その時からだろうか、岸は定期的に俺にその人の写真を見せてくれるようになった。 そんなことを思い出していた俺は、岸が至近距離にいることに気づいていなかった。 「そんなに好きだった?兄貴のこと。」 目の前にいる岸の呼吸が、自分の呼吸と混じるようなそんな距離だった。 「兄貴が好きなんだったら、俺のことも好きになったりしないの?」 岸の長い指が俺に首を捉えてからの数秒間、俺は体の力が入らない感覚を心地いいと感じてしまった。 そうか、これが、恋なのか。 辞書なんて、必要ないじゃん。 これこそが、恋なんだ。 to be continued...
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