第四話 最強の存在

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「そんな嘘、信じるわけないじゃん。」 よし、かろうじて声はちゃんと出てる。 裏返る要素もない。この調子で話し始めたらいいんだ。 目線を合わせないように、岸の眉間に視線を集中させて話した。 「そんなことでわけないから気にするなよ。 それより俺、買い物しないといけないんだったわ。 母さんに頼まれてんだよ。ごめんな、もう行くわ。」 俺はそう言って立ち去る準備を始めた。 これでいい。これでいいんだ。 明日からは普通に戻れる。 恋ではない。恋なわけがない。 少し綺麗な男の友達に、少し鈍感な男の友達に、 その癖わりと敏感だった男の友達に、 少し、焦ってるだけなんだ。 「俺の兄貴、覚えてる?」 岸の言葉に、俺の時間が止まったような錯覚を感じた。 もちろん、覚えてるよ。 お前の大切で大事で、最強な存在。 俺が越えられない、絶対的な存在。 そういえば、兄貴って呼ぶようになったのか。 前は兄ちゃんってちゃん付けしてたくせに、大人になったのか。 「兄貴の写真、よくお前見てたじゃん。」 岸の声が少しだけ震えているのを、俺は見逃さなかった。 「俺が見てたっていうより、あれはお前に見せられてたんじゃなかったっけ?勘違いすんな。」 少しだけ突き放した言い方をしたような気がして、つい岸の表情を確認してしまった。
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