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「りょうさんって呼んでいい?」
付き合い始めてから、隆はふいにそんなことを言った。
「別に呼び捨てでもいいんだけど。タメなんだし。」
「だって、僕のこと年上だと思って声かけたんでしょ。
上品な人って思ってたんでしょ。それなら、その期待に応えたいじゃん。
不快だったら止めるけど。」
俯いた顔がやけにかわいくて、少し強引に頬を掴みながら
「いいよ。」と言った俺に、隆は少しだけ笑って軽く頷いた。
「遅かったね。飲み会楽しかった?」
眠そうに片目を擦りながらすり寄ってくる恋人を、
かわいくないと思うやつがいるなら見てみたい。
「まあまあかな。ご飯おいしかったから、今度行こうぜ。」
無意識に話を切った自分を肯定したくはないが、
今日の出来事はなかったことにしようという意識が働いたのだと思った。
「お酒、結構飲んだ?顔が少し赤い。」
そう言って隆は長い指で俺の頬をやさしく包んだ。
「お酒強いの知ってんだろ。」
「そうだね。」と言って、俺の手をひっぱりベットに誘い込んだ。
「今日はしないよ。酒入ってるから。」
そんな俺の言葉を無視し、
少しずつ服を剥がす隆の手が少しだけ震えているのを俺は、
その時の俺は知らなかった。
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